2016年9月5日月曜日

団塊世代の写真愛好者はなぜ星野道夫に魅かれるのか? Why the baby-boomer like photographer MIchio Hoshirno ?

 筆者の尊敬する写真家は数名居る。ウインドサーフィン関係ではまずスティーブ・ウィルキンス氏、故・前野やすし氏。ハワイ関係では佐藤秀明氏。そうして自然・動物系では故・星野道夫氏と岩合光昭氏だ。
今回の銀座松屋での写真展図録、この後関西を回り横浜に戻る。

岩合氏のネコライオン展図録は同じ猫族のネコとライオンの同じ仕草を比較。

これにヒントを得て、現在ヤマセミ・カワセミの写真集・写真展を企画中だ。

岩合氏は「猫・写真家」で既に著名な現役写真家だが、星野道夫氏は20年前カムチャッカ半島で撮影合宿中・野営テントをヒグマに襲われ亡くなってしまった。その事故の方が当時は報道で有名になったが、その作品に関してはやっと此処10年前辺りから高い評価を得るようになってきた。

 一度地元市川市での写真展でお逢いした奥方の星野直子さんの努力も在って、最近は多分広告代理店もバックに入り、大きな写真展も開かれているので、行かれた方も多いだろうと察する。今回も今日まで東京銀座松屋で「没後20年記念写真展」が開催されていた。今後大阪・京都・横浜などへ巡回する。
星野道夫の旅・展= http://www.asahi.com/event/hoshino20/

 いつ見ても思うのだが、特に団塊世代の写真撮影愛好家で自然や動物(野鳥も含む)の撮影をしている者にとって、彼ほどその作品から教わる事の多い
写真家はいないと思う。

 自分でもプロの彼らの数パーセントのレベルにしろヤマセミの生態を観察し、撮影している同類として、その作品を見れば見る程、そのすごさが良く判る。
 狙った野生の生き物の情報を地元の人間達から集め、自分の眼で確かめ、航空機をチャーターするなり、自分の足で徒歩で向かうなどしてその動きを追う。そうしてあらかじめロケハンをしていた素晴らしい背景の前で狙った通りの「画像」を収める。

 現在の一眼レフ・デジタルではない、大判銀塩カラーにしか表現できない雄大さ、繊細さが見てとれる。

 今回見た中では、マーモットのようなホッキョクジリスが立って画面の左方向を視ている、その背景の雄大な山々にきちんとピントが合ってその広大さが表現できている。望遠レンズではない、望遠で撮れば当然被写界深度は浅いので小動物にピンが来れば背景はあれほどくっきり表現できない。
星野道夫のホッキョクジリス、背景の山々までの大自然が素晴らしい。

普通に小動物を撮るとどうしても背景はボケてしまう。この表現の差に感動。

一方で、広角なら充分表現できるものの、その為には小動物に余程接近しなければならない。彼はどうしたのだろう?不思議な事を沢山画面が訴えてくる。
 とかく、珍しい動物や野鳥が被写体だとどうしてもその被写体にズームアップした写真を撮りたがるが、彼・星野道夫はそこをぐっとこらえて背景の大自然の中での生き物をきちんととらえている。其処が並みの動物写真家と違う所だろうと思う。

 デジスコでアップした野鳥を「ノートリ」とか言って自慢しているレベルの撮影方法とは一味も二味も違う、予め考えに考え抜いた撮影をしている点で大変勉強に成るプロフェッショナルだ。動物のアップの写真だけなら動物園でも撮れる場合もある。
 
 アラスカのイヌイットだろうか、満月の夜カヌーで狩りに出る。遠くに満月が見えている、という事は夕日が沈んで少し経った頃だろう。西の夕陽の名残の灯りでイヌイットが写せている。高緯度なので白夜に近いのかもしれないが、極でしか撮影出来ない不思議な色をしていた。
全て星野氏の画像は今回写真展図録より

一つ驚いたのは、別冊太陽に出ていた彼の取材メモ。筆者もヤマセミの巣立ちまで21日間車の中から観察を続けて詳しいメモを取って在るが、彼のメモはテントの中か宿で綺麗に書いたものと思われる。きちんとしている。こちらは入れ替わり来る親鳥の♂♀確認その他、獲ってきた魚の種類までなんとかその場でメモるため、どうしても汚いメモでしかも英語で書かざるを得ない。
 別にかっこつけている訳でも無く英語の方が余計な形容詞を書かないで済むので楽なのだ。一番の理由は日本語は漢字・ひらがな・カタカナの3種類の文字を使わねばならないが、英語であればアルファベットだけなので簡単。更にそう沢山の単語を知っている訳では無いので、逆に楽なのだ。

 この辺りが、星野道夫氏の几帳面な性格が判って面白かった。