2016年12月7日水曜日

鮎漁師とヤマセミの共存関係。 Coexistence relation between a sweetfish fisherman and a Crested kingfisher.

 2010年4月から6年半に渡り熊本県人吉市のヤマセミ生態に関して観察・撮影をしてきたが、今回は日本一の鮎の育つ河川、球磨川の鮎漁師とヤマセミの面白い共存関係をレポートしてみたい。

 ご存じのとおり球磨川は日本三大急流(最上川・富士川・球磨川)の一つに数えられ、なおかつ最新の全国河川水質検査でトップのもっとも水質が良好の部門にランクインした。其れまで日本一綺麗な河川として8年連続トップを誇った川辺川に並んだ訳だ。

 此の国土交通省の毎年発表するデータは見た目で綺麗とかいうレベルではなく、あらゆる方面・角度からデータ収集を行い極めて厳しい精査の後決定、発表されている。従って(自称)清流四万十川・・・などという河川が入っていなかったりして「えっ・何故?」という事にもなるが、マスメディアが勝手に表現している清流と本物の清流には随分違いがあるのだ。

 その意味からすれば、球磨川、更には人吉市郊外で合流する球磨川支流の川辺川に恵まれた鮎は日本一だと言われる所以も良く判るだろう。そうして、その恵まれた環境で育った鮎を刺し網で獲る漁師と、その鮎を餌として生息するヤマセミが共存している場面を生で観察、撮影できる筆者は相当恵まれていると、いつも感謝している。毎回人吉に到着する度に矢黒神社(別名ヤマセミ神社)へお参りするのもこれらに感謝しての事だ。

 今回のレポートは、人吉中心部からかなり離れた球磨川本流での刺し網漁師さんの網干竿とヤマセミの関係を少し詳しくご紹介。

 刺し網は基本的に前夜日没時に数本を受け持ちの決められた場所に設置する。翌朝日の出前からそれを回収し、網干竿に掛けて網を傷付けないように鮎を外し一旦自宅に持ち帰り、早ければすぐに出荷。網が乾いた頃再び現場に戻り網についた藻や川海苔を外し夕方まで干す。気温が下がり川の水が冷たくなる11月以降は辛い重労働だ。

 球磨川は鮎が豊富なので、友釣りは12月末まで漁期となっている。しかし寒くなると水に入っての友釣りも体力的に厳しくなり殆ど釣り人はいなくなる。刺し網も12月末までだが、大抵11月末で刺し網漁は終了。網干竿も網が無くなり竿だけが残っている場合が多い。ヤマセミはこの時期その竿に羽根休めの為留まる事が多い。実はこの竿こそこの時期観察には最適の場所なのだ。

 多分全国でもヤマセミを漁師の干し網で観察できるのも球磨川流域だけの様な気がする。

 今日はまずその環境の説明から・・・・・。

最新の清流ランキングは昨年2015年調査データ、球磨川がランクインした。

初冬の球磨川は気温が下がれば必ず霧に成る。こういう状態でのヤマセミ生態・観察撮影は非常に辛い。

鮎漁刺し網を上げて、早朝寒い中鮎を外す漁師さん。

鮎を外し終ると、いったん自宅に鮎を運ぶ、即出荷するか、客が待っている。

網にはまだ藻や川海苔がついている。この時来るのはカワセミが多い。

再び漁師さんが来て網のゴミをすべて排除し干しに入ると誰もいなくなる。

そうすると対岸で待っていたヤマセミが来て留まる。

まだ網のある時期はあまり網寄りには留まらないようだ。

時には堤防側に向いて留まる事もあるが非常に珍しい。

全ての画像は、このように車の中から隠れて撮影しかできない。